今年入った新入社員の教育係の子が突然の風邪休みの為、私がピンチヒッターとして任された。最初は問題なくやっていたつもりだったけど、私の体は徐々に熱を持ち始め息も微かに荒くなっていく。
 後輩の一人が体調悪いんですか?と聞いたので、今日ちょっと暑くって、と何ともないように努めた。更年期って怖いわーって誤魔化せば、まだそんな歳じゃないでしょと笑われた。

先輩、座らなくて大丈夫ですか?疲れません?」
「んっ、だ、大丈夫。はは」

 本当は大丈夫じゃない。でも、椅子に座ってしまうともっと大丈夫じゃなくなってしまうのだ。既に経験したからこそ、今日は新人教育で良かったと後輩の後ろからPC画面を覗き込むように机を支えに手を置いた。

 チラッと私の席の斜め前、尾形さんを盗み見ると、どうやらあちらさんも私を見ていたようで目が合った。すると突然私の下腹部の振動が激しくなった。

「んっ……ぁ」
「どうしたんですか?なんか苦しそうですけど…」
「ん、だいじょ、ぶ。ごめん、ちょっと休憩してもいい、かな?」
「ええ、大丈夫ですよ。私も飲み物買ってきます」

 後輩は腰を上げると鞄から財布を取り出し、それじゃ、とオフィスを出て行った。その一部始終を見ていたのか、いつの間にか背後に居た尾形さんに、おい、とニヤニヤとした笑顔を向けられる。私がこんなことになった元凶はこの男だ。

「なんて顔してんだよ。ほら、調子見てやるから来い」

 私にしか聞こえない声でそう言うと、有無を言わさず私をオフィスから連れ出した。そして、今は物置きになって仕事場として利用されていない部屋の扉前まで来ると、入れ、と淡々とした口調で言われた。ドアノブに触れるとひんやりとした感触が手の平に伝わり、それすら気持ち良さでどうにかなりそうだった。

 中に入れば、尾形さんは後ろ手に内鍵をカチャリと回す。その音に思わず肩を震わせた私を見て、もう限界か?と揶揄うと厭らしく笑った。

「も、ゆるし、て…っ」
「だったらそこに座って脚広げてみろよ」

 尾形さんの視線の先には会議用テーブルがあり、私は素直にお尻を乗せて座った。一向に足を開かないでいると、尾形さんは自身の左足を私の両足の間に割り込ませて、無理矢理こじ開けるように開かせた。

「やっ、やぁ……、も、やだッ」
「さっさと楽になりたいんだろ?脚を広げろ」

 脚をゆっくりと広げれば、パンツの中心部から太腿の付け根に掛けてピンクの細い配線が伸び、バンドの様なものでリモコンが留められている。

 そう、私は昨日の夜に目隠しプレイからの浴室プレイに持ち込まれ、気を失って目を覚ました頃にはこんなことになっていた。外そうとすると尾形さんに「お仕置きはまだ終わってない」と怒られた。それを本気で拒むことも出来ただろうけど、もう一人の私がきゅっと子宮を疼かせたのだった。

「もうドロドロだな…、はっ、昨日中出しした分が溢れ出てんじゃねえか。ちゃんとローターで栓してやったってのに」
「きの、う……中の、ぜんぶ…っ出したって、言ったじゃん…ッ、んぁ」
「そうだったか?忘れたな」
「ひゃう!あっ、やだこれ以上つよ、く…しちゃ、らめぇ」

 彼の右手にはリモコンが握り締められており、それが遠隔操作用のものだと知ったのは突然振動が強くなった時だった。最初は自分の身じろぐような動きで太腿に取り付けられたリモコンに触れてそうなったのかと思っていた。でも、弱くなったり強くなったり、尾形さんと同じ空間にいる時にそれは頻繁に起こっていた。

「ほら、嫌なら自分で抜けばいいだろ」
「そ、んな」
「手伝ってやるよ」
「ひゃっ、やめ……っ、ん、アァァッ!!」

 手を握られたかと思えば、私の手を使って配線を握らせると、思い切り引っこ抜く要領で私の腕を思い切り引っ張った。机の上に自分の腕ごとゴトッとローターが落ちると、尾形さんが遠隔操作で振動をOFFにした。

「…はぁ…はぁ…ん、はぁ」
「はっ、勝手にイクなよ」

 どろりと溢れ出た尾形さんの精液は、私の愛液と混ざりあって更に濃厚なものになっていた。それを掬い取ると、その指を私の中へ沈めていく。既に敏感になったそこは、侵入者に対してきゅっと締め付けた。私の気持ちいい所を知っているその指が念入りにとんとんと刺激を与えてくる。ぐちゅぐちゅと掻き回されて卑猥な音が静かなこの空間で反響して、厭らしく鼓膜を震わせた。

「もうグズグズだな」
「いわな、いで」

 イきたくても中々イかせてくれないその指がじれったくて、思考は何も考えられないぐらいにおかしくなっていた。

「なあ、この関係に名前を付けるとしたら何だろうな」

 唐突な質問に私は、え、と声を漏らすがその後の言葉が出てこなかった。ヌプと指を抜いて、カチャカチャとズボンのベルトを緩めて尾形さんは反り立ったそれを私の秘部にスリスリと擦り付けて蜜を絡めた。
 太腿裏をぐっと手で押さえて私の腰を浮かせると、今度は尾形さんがヌプヌプと中へ、ゆっくり奥へ侵入した。既に引く付いている私の中は、きゅうと尾形さんのそれを締め付けた。

「おい…っ、あんまり締めんな」
「んっ、だ、って……お、っきい」

 別に昨日と変わんねぇだろ、と苦しそうな声で言う尾形さんの顔は煽情的で、とてもじゃないが女の私が見ても色っぽかった。そんな低くて艶のある声が、漏れ出す吐息と一緒に私の左頬を掠めて身震いをした。

「動くぞ、くっ」
「あっ、んっ、はぁ…んんっ」

 段々と声のボリュームが大きくなる私に、黙れと言って唇を這わせると甘ったるいキスで口を塞がれる。上下の口を侵され、心まで満たされていく感覚に、幸せを感じていた。裏を返せばただの痴女の思い違いに過ぎないのに、目の前の男から目が離せなかった。
 私の体で、私の中で、眉間に皺を寄せながら気持ち良さそうな表情を見せる。
 この人が、愛おしくなって、ぎゅっと胸が苦しくなった。

 彼が私を求める分だけ、私は彼を突き放してしまう。

 これ以上、心を乱されたくなかった。本心を暴かれたくなかった。
 別れた後も、ずっとずっと、好きだった。辛かった。沢山泣きたくなった。平気なふりして、笑顔でいることに疲れてた。だから、こんな風に突然求められて疑り深くなっていた。

 結局のところ、体の相性は良い。体がそれを覚えてしまっているのだ。どんなに揶揄われても、どんなに意地悪をされても、きっと、これからも私は刻み付けられた彼への想いを断ち切れないのだと思った。
 だから、これからも自分の気持ちに蓋をして知らない振りを続けていく。

「も、だめっ、イっちゃう」
「何回でもイけよ…っ、はっ、クッ」

 ズンッと強く腰を打ち付けられ、腰を仰け反らせると子宮がきゅうっと締まる感覚に全神経がぐちゃぐちゃになる。絶頂を迎えても尚、尾形さんは律動を止めようとしないので、既に息も絶え絶えな私は何度もイかされ訳の分からない状態になっていた。
 イきすぎて、涙をボロボロ流しながら腰をガクガクさせていると、ほんとお前のその顔最高だぜ、と色っぽく笑う尾形さんが私の腰を掴んで一気に腰の動きを速めるとグッと最奥で達した。同時に私も達すると、緊張の糸が解けたように体がだらりと雪崩て机に寝そべった。

「なあ、。ずっと俺のもんでいてくれよ」

 彼の言葉に、私は肩で息をしながら力なく笑うと、小さく呟く。

「絶対に…イヤ」

 静かな部屋には充分なほど聞こえるその声に、目の前の男は、ふっと笑うと乱れて垂れていた髪の毛を撫で上げたのだった。