今私は何をしているかと言うと、尾形さんの夕飯作りをさせられてる。当の本人はソファーに座ってテレビ点けたままスマホをいじっていた。これじゃ私のやってることって家政婦じゃないのよと心の中でツッコミを入れる。
 晩御飯の事なんて何にも考えてなかったから手軽に作れるカレーでいいか、と私は切った野菜を炒めながら久しぶりの手料理をちょっとだけ楽しんでいた。

 出来上がったカレーを尾形さんに報告すると、私はもう帰りますからといそいそと荷物を纏めて部屋から出て行こうとする。それを見た尾形さんは「食ってけよ」と言った。いや、でも、と渋る私に良いからと結局彼に言い包められてしまう。
 ま、まあ…お腹空いてるしいいか、と食欲に勝てるはずもなく御馳走になることにした。

 久しぶりに作ったカレーも悪くないなとご満悦になる私に、尾形さんはフッと鼻で笑った。人の顔見て笑うなんて最低なやつ。そう思っている私に彼は、らしくもなく「笑った顔の方がいい」と言った。いや、まって何それ……。あまりにも予想外で突然過ぎる一言に流石の私も恥ずかしくなって顔を赤らめてしまった。

「あの、さ……そうやって変なこと言うのやめてよ」
「別に変じゃないだろ」

 いや変だって。付き合ってた頃に全然そんなこと言ってくれなかったじゃん。いきなり優しくするなんて反則やしませんか。
 尾形さんをまともに見れなくなってきて、私は目の前のカレーを無心になって食べた。

 食べ終わって一休憩した後、私がそろそろ帰りますと立ち上がる。これ以上ここに長居しても仕方ないし、明日も仕事だからさっさと帰って風呂入って寝たい。
 すると、尾形さんに腕を掴まれて私は体勢を崩しそうになる。ぐっと片足で踏み止まった後、吃驚するじゃないですかと文句を言いながら振り向くと、彼の真剣な表情が私の視界に入った。

「あの、手…離して」
「なんで?」
「なんでって…帰るから、ですけど」
「帰るなよ」
「……何言って、っ」

 それは一瞬だった。目の前が突如暗転すると、私の視線もいつの間にか天井を見上げるように尾形さんを見詰めていた。背中には尾形さんが座っていた温もりを感じれる程、生暖かい感覚。

「なあ、
「…っ」

 名前なんて、いつ振りだろうか。別れてからお互い苗字で呼ぶようになったし、もうそんな日は絶対に来ないと思ってた。

「どい、て!」
「暴れんなよ。俺の言うことを聞け」
「んっ」

 彼は私にキスを落とした。もう、私達は終わったんだよ。なのに、尾形さんの考えてることが分からない。別れようって言ったのも尾形さんからだ。それなのに、私は尾形さんの性処理の道具みたいに扱われちゃうの?

「や、やだっ、やめ、んぅっ」

 深い口付けに、口の端からわずかに入る酸素を求めて息をするがやっとだった。唇が離された頃には意識は朦朧として、口の端から垂れる唾液を拭う力も無い。そのまま尾形さんに寝室のベッドまで抱えられ運ばれると、あとは流れるように服を脱がされるだけ。

 体が重くて、全然動かない。なんで、こんな。次第に呼吸も苦しくなってきて、もしかして一服盛られたのかと気付いた時には既に遅かった。なんでこんな卑劣なことが、そう心の中でまだ保たれている理性に縋る様に、私は上手く回らない呂律で「おが、た、しゃ…」と彼の名前を呼ぶ。

「ははっ、これから楽しもうぜ」
「んぐっ、あ、ふぁ」

 武骨な彼の指が私の口の中に入ってきた。その指が私の舌先を弄ぶように絡める。既に敏感になっている私の体は、たったそれだけの事でイっちゃいそうだった。やだ、やだ、と心の中で抵抗しても無駄なことぐらい分ってるのに、そうしなければ後戻り出来ない事になると思った。

 もう片方の手が私の下着に触れると、股の割れ目に手を当てて、もう濡れてんじゃねえかと楽しそうに耳元で囁かれた。羞恥心が全身に襲う感覚と、それに似た興奮を覚え始めた私は頭が既にパンクしそうだった。

 ゆっくりとパンツを下ろされると、私の口に入れていた彼の手がそっと膣口に宛がわれた。まさか、と思った時には彼の指が一気に三本差し込まれた。

「あぁっ、あ、やぁっ」
「俺の指を三本も飲み込んじまったぜ。お前のここは本当に変態だな」
「やっ、ちが…あんっ、んぁ」
「ほら、お前激しいの好きだったろ。さっさとイけよ」

 容赦ない指の動きに私の腰は浮きっぱなしだった。弱い所を徹底的に指の腹で撫でたり突いたりと、体はあまりにも正直で気持ち良さに耐えきれず直ぐにイってしまう。意識も朦朧として、呼吸は荒くなり苦しい。尾形さんの低い声が鼓膜を揺らすたびに、どうにかなってしまいそうだった。

「次はお前の番だぜ」
「ひゃっ」

 腕を引っ張られて上半身を起こされると、尾形さんは衣服の下からでも分かる盛り上がったそこを見せて、ほら、と催促をする。既に抵抗するという気持ちを失っていた私は、彼のベルトをカチャカチャと外して、ズボンのチャックを下した。
 下着の上からゆっくり口の中に含むと、舌先を使って撫でる。気持ち良さそうに眉をぴくりと動かした彼を見て、私は段々と彼のそれが欲しく堪らなくなった。

 ズボンと下着を一気に下すと、既に勃起した彼の先端に顔を近付けてちゅっと音を立てキスすると口に含んだ。フェラをすると更に膨張させたそれに歯を立てないように吸い付く。

「ん、ふあっ、」

 すると私の膣口にまた彼の手が宛がわれる。フェラをする私をそのままに、彼も私のあそこを指で弄り始めたのだ。上も下も全部気持ち良くなっている私は、またイってしまいそうだった。段々、苦しさから涙が出てきた私は、彼に懇願するように口に含んだまま見上げた。
 お願い、もう挿れて、

「言いたいことがあるなら口で言え」
「……い、いれ」
「なんだよ。ハッキリ言わねーと分かんねえぞ」

 ニヤニヤとゲスい顔で見下ろす彼の顔に、思わず下半身がぞくっとして、きゅっと疼く。

「お願い、挿れて…っ」
「どこに」
「…こ、ここに」

 とっくに理性なんて失っていた。
 足を広げて、両手の指でくぱっと広げたそこを彼に見せ付けるように、私は犬のようにおねだりをする。

「お願いします、私を気持ち良くしてくださいって言え」
「お願い、します……ッ、わたしを、気持ち良くしてくだ、んあぁっ!!」

 言い終える前に私の中に尾形さんのそれが入ってくると、一気に奥まで突かれた。たったそれだけで、私はまたイってしまった。んだよもうイったのかよと耳元で囁くように笑う彼は、至極ご満悦な顔を見せる。

「ははっ、何勝手にイってんだよ、なあ?!」
「ひゃうっ!あん、やっ、まってもう…ッ」

 またイっちゃう、と口にする暇もなかった。すぐに二回目もイかされると、三回目、四回目、と私は息も絶え絶えに、意識は飛びそうになりながら、必死に彼の律動を体に刻まれながら夢中になっていた。

「お前は、俺のもんだろ?」
「んあっ、や、ちがッ」
「違わないだろ。お前の此処は俺を欲しがってる、クッ」

 腰を掴まれ、最奥まで突かれると私の視界はちかちかと光る。反転させられ四つん這いになった私に覆い被さるように後ろから挿入して、まるで犬が本能のままに交尾する姿になる。
 何度イっても、私の体は疼いて彼の体を求めてしまう。それは薬の所為なのか、それとも私の性的本能なのか。今はどうでもいい。目の前の彼が、欲しい。

「くっ、出すぞ」
「や、やだ…中はやだっ」
「さっさと孕んで俺のもんになっちまえよ」
「あっ、やぁ、アァァァッ!!!」

 びゅっびゅっと吐き出されたそれは、私の中にじわりと流れ込む。

 同時に私の意識は途絶えた。