今日も彼女に振り回されて、それってつまりどういう意味?私の幼馴染みは、馬鹿が付くほどバスケがすっごく好きで、格好良くて、自慢の男の子。 それと、私の大切な人。 昨日は帰り道で、ずっとだんまりだった。 いつもなら、沢山お喋りして(私が一方的にだけど)バスケの事とか部活の事を聞いたり。なのに、私の頭からケンちゃんの言葉が離れなかった。 私が可愛いねって言ったテディベアを、ケンちゃんは好きな人の誕生日にプレゼントするんだって。まあ、誕生日にプレゼントするのか聞いたのは私だったから、ケンちゃんはそれに対して答えただけ。私が自分で墓穴を掘ったんだから、ケンちゃんは全然悪くない。 今日だって授業中に居眠りしてるケンちゃんの横顔を見て、胸が温かくなってる。バスケの邪魔にならないように、ずっと気持ちを隠してた。インターハイに行くんだって、いつもの強気な態度で、でも確固たる決意をケンちゃんから感じた。 妹の樹里ちゃんの事もあるし、インターハイに行くことは夢だったもんね。 いつも通り、平常心で。心の中で唱えながら、私はノートの切れ端を丸めてケンちゃん目掛けて投げれば、見事に頬っぺたにヒットした。当たった所を指先で掻きながら、なんじゃと寝惚けながら紙屑に気付く。直ぐに視線は私へと向き、お前かと睨んできた。 クラスの子から良くケンちゃんの真顔が怖いって言われるんだけど、私はケンちゃんの睨み顔ですら可愛く見えるから怖くない。 (練習キツいの?) もう一枚紙を千切ると、シャーペンでそう書き殴ったものをケンちゃんの机にそっと置いた。 (別に。) たった一言だったけど、ちゃんと返事を書いてくれたので良しとしよう。それを見てクスッと笑うと、もう一度その紙の裏に返事を書いて渡す。何度も紙が私とケンちゃんの机を行き来する。ちょっとした幸せを噛み締めながら、次の返事を貰った私はキョトンとなった。開いた紙には何も書かれていなかった。裏を確認してみるが、そちらも何も書かれていない。 何がしたいんだろうとケンちゃんを見てみたけど、視線は窓の外へ向いていた。 一体なんなのよ。そう思いながら、ハァと溜息を吐きながらも手に持っているその紙をジッと見ていると、消しゴムで消した痕が薄っすら残っていた。一応何か書いたんだ。そう思い私は紙をいろんな角度から見ていると、それを不審に思った先生が私の名前を呼んで、この問題を解いてみろと当ててきた。 授業を碌に聞いて無かった私は、しまった、と思いながらも黒板の前に立ち何とかチョークを走らせる。 どうやら正解だったみたいで一安心しながら席に戻る私に、口パクだけど明らかに「ばーか」とケンちゃんはこっちを見ながら言った。 席に戻ると、さっきまで持っていた紙が机の上に無い。あれ、どこ行ったんだろうと机の引き出しに手を突っ込んでみるけど、やっぱり見つからなかった。風で飛ばされちゃったのかなあ、と考えてみたけど窓は開いてない。 結局、なんだったのか分からないまま私とケンちゃんの文通はチャイムと共に終了した。 気になって仕方が無かった私は、すぐにケンちゃんに駆け寄って「さっきのなに?」と詰め寄った。ケンちゃんは別に大したことないと言って誤魔化す。段々気になってきた私は、どうにかして聞き出せないか腕を組んで考えていると、ケンちゃんはぼそっと何か呟いた。聞こえなかったから、なに?と聞き返せば「もう幼馴染みはやめるって書いた」と言った。 それって、つまりどういう意味? |