今日も彼女に振り回されて、

好きな人いるなら協力してあげる!





 ワシには幼馴染みの女がおる。っちゅう……まあいっつも笑ってて、なんじゃ楽しそうやのぉ思いながら、ワシはアイツの笑った顔が好きじゃった。ほやから、高校に入ってアイツに好きな人がおるっちゅー話を聞いた時は流石に焦った。まあ、そん時にワシもが好きじゃって気付いたんやけどの。



「好きな人がいるなら協力してあげる!」

 少しでもワシのことを気にして欲しいなんて、アイツに分かるはずが無かったんじゃ。勢いで言った「好きな奴がおる」って言葉に、は大きな瞳をパチパチさせた後、ぱぁっと嬉しそうな顔をして協力するっちゅーた。ほやからお前やって言いたいんじゃが、ただこいつが困るだけじゃろう思って、言い掛けた言葉をぐっと腹ん中に飲み込んだ。

「別にええ。お前に協力してもろぉたら失敗しそうじゃ」
「えー、なにそれ。まあいいけど…ケンちゃんも頑張ってね!」

 そうやってお前がワシに笑い掛けてくれたら、それでええんじゃ。いつかが好きな奴と仲良うなっても、お前が幸せならそれで……。

 ワシと話していたは、隣のクラスの奴に呼ばれて行ってしまう。後姿を見送りながら、ほんまアイツもいつの間にか女になっとったんじゃなって思った。

 東京から広島に引っ越してきたは、俺の親父の職場から近い公園でよぉ一人で遊んどった。友達もおらんのかって、子供ながらに直球に聞いたワシに、バスケが友達と言って笑った。ミニバスをやっちょった時、あいつは髪の毛が邪魔だと言って綺麗な黒髪を短うしとった。
 だが、あの短かった髪の毛も今は長うなって、切らんのか聞いた時は願掛けしてると答えては微笑んだのを、ワシは忘れられんかった。

 それは、今あいつが想っとる奴がおるっちゅーことやから。



 日直当番を終え、すっかり教室はワシ一人になっとった。バスケ部の練習で体育館に行くワシを引き留めたのはじゃった。まだ居ったんかと驚いたワシは、なんか用かと問い掛ける。車谷君って今日も部活出てる?と聞くので、あのチビなら毎日練習しとることを教えれば、ぱぁっと嬉しそうな顔に変わった。

 …嗚呼、そうか。
 そういうことやったんか。

「なんじゃ、まさかあのチビのことが好きなんか」

 恐る恐る出た言葉に、は左手で髪の毛を耳に掛けるとスッと視線を流した。逆光じゃったが、こいつの露わになった耳が少し赤く染まっていた。

「別に車谷君のことは……、その、私は」
「ええって隠さんでも。ま、なんかあればワシも協力したるわ」

 このまま幼馴染みっちゅーのを大切にするのも悪くないんかもしれん。こいつに告白して振られた後にワシが普通に出来ても、がワシに気を遣うかもしれん。
 そんな風に考えれば考えるほど、やっぱり今の関係を未来永劫続けることがええんかもなあと、一人溜息を吐くと練習行って来るわと挨拶して教室を後にした。